長年にわたり日本の音楽界の第一線を走り続けてきた「嵐」。その圧倒的な人気と影響力は、音楽のみならず、テレビ、映画、舞台など多岐にわたる活躍を通して世代を超えて多くの人々に愛されてきました。2020年末の活動休止発表から約6年。再びファンの前に5人がそろうというニュースは喜びと同時に、「完全復活ではない」という発表内容により、大きな反響と戸惑いを呼びました。
「5人でなければ嵐ではない」──この言葉に込められた意味と重みとは何だったのか。そして、なぜ彼らは“再始動”ではなく“活動終了”という選択をしたのか。嵐という存在の本質に迫るべく、本記事ではその舞台裏にある背景、メンバーの想い、そしてファンとの絆に焦点を当てて掘り下げていきます。
はじめに:2026年春、嵐が活動を終える決断
2025年5月6日、日本を代表する国民的グループ「嵐」は、ファンクラブ向けの動画メッセージにおいて、2026年春に再び5人が揃ってコンサートツアーを開催し、その終了をもってグループとしての活動に幕を下ろすと正式に発表しました。ファンの間では長らく「再始動」への期待も囁かれていただけに、この発表は大きな波紋を呼びました。
2020年の大晦日をもって活動休止となって以来、約6年ぶりとなる5人揃ってのメッセージ。その表情、語り口調には、長年にわたる葛藤と議論、そして深い絆と覚悟が滲んでいました。この再会が一時的なものであり、「完全な再始動ではない」という事実に、ファンの中には落胆と感謝が入り混じった複雑な感情が広がっています。
大野智の想い:「嵐としての活動を終えたい」
嵐の活動終了の根幹には、大野智さんの強い意思がありました。2017年6月、彼は「一度、自分の人生を自由に生きてみたい」とメンバーに告白。これまでの芸能人生を振り返り、自由な時間と精神的な解放を求めていたことが明らかになりました。
この打ち明けを受け、他の4人のメンバーは驚きつつも理解を示し、話し合いを重ねた結果、「5人がそろってこその嵐」という考えに基づき、2020年末での活動休止という選択に至ったのです。NHK紅白歌合戦でのラストステージでは、涙ながらにファンへの感謝と未来へのエールを伝える姿が印象的でした。
活動休止後、大野さんはメディアへの露出を一切断ち、沖縄・宮古島で自然と向き合いながら静かな暮らしを送っています。その間、SNSなどにも姿を現すことなく「完全な沈黙」を貫いたことから、彼の決意の本気度がうかがえます。
そして2025年、ファンクラブ向け動画に久々に登場。再集結は「限定的な参加」であり、芸能界への本格復帰ではないと語るその姿からは、「もう一度だけ、嵐としてファンの前に立ちたい」という強い思いと、同時に「これが最後」という覚悟がにじんでいました。
「5人でなければ嵐ではない」──譲れなかった信念
嵐というグループは、結成当初から「5人のバランスこそが嵐」という理念を持ち続けてきました。どれほど多忙でも、どんな外的要因があっても、この考え方は揺らぐことなく、彼らの中で共有されていたのです。
2023年のインタビューでは、二宮和也さんが「4人でも6人でも嵐ではない」と断言。また、相葉雅紀さんも「誰かがいない状態で嵐を名乗るのは、自分の中では考えられない」と語っており、グループ全体に一貫した価値観があることが明らかです。
このような信念があるからこそ、大野さんの活動休止中に他の4人で嵐を再開する選択肢は一度も検討されなかったといわれています。「5人でなければ嵐ではない」というこの言葉は、単なるスローガンではなく、彼らの活動の根幹にある哲学だったのです。
その結果、2026年春の一度限りの再集結を「グループ活動の最終章」と位置づけ、「その後は各自の道を歩む」という明確なけじめをつけることになりました。
再始動を阻んだコロナ禍とタイミングのズレ
2020年以降、世界中を襲った新型コロナウイルスのパンデミックは、嵐の再始動計画にも大きな影響を与えました。本来であれば、活動休止後も段階的にファンとの再会イベントやサプライズ企画などが予定されていたとも報じられていますが、感染状況の悪化により、全てのスケジュールは白紙に戻されたのです。
特に嵐の魅力は「ライブにおける一体感」とも言われており、ファンとのリアルな接点がなければ真の意味での“嵐”を感じてもらえないという考えもあったようです。
そのような状況下、2024年に入り再始動について再び話し合いが行われるようになり、メンバー間の気持ちの整理と方向性の確認が進められていきました。その結果、「再始動」ではなく「最後にもう一度だけ感謝を伝える」という結論に至り、ツアーをもって活動終了というかたちを選ぶことになります。
この選択は、彼らが常にファンとの信頼関係を最優先に考えてきた姿勢を象徴しており、期待を煽るような曖昧な発表を避けたことも、彼ららしい誠実な対応だと評価されています。
メンバーそれぞれの道と変化
嵐の活動休止以降、5人は個々のステージで存在感を示しています。それぞれの活動には嵐時代とは異なる個性と方向性があり、グループの多様性が個々の才能として花開いた形です。
- 二宮和也さんは、2023年に旧ジャニーズ事務所から独立し、個人事務所を設立。俳優業に加え、YouTubeチャンネル『ジャにのちゃんねる』の活動やプロデュース業など、幅広い分野に進出。
- 松本潤さんは、NHK大河ドラマ『どうする家康』で主演を務めたほか、ライブ演出や舞台監督としても高く評価され、「裏方としての才能」にも注目が集まっています。
- 櫻井翔さんはニュースキャスターとしての顔を持ち、報道番組のMCや国際的な取材活動にも関わりつつ、俳優業でも根強い人気を誇っています。
- 相葉雅紀さんは動物番組やバラエティを中心に、穏やかなキャラクターで幅広い世代から親しまれており、家族との時間を大切にしていることも知られています。
- 大野智さんは芸能活動を再開することなく、現在も自然に囲まれた暮らしを送りながら、自身の内面と向き合っていると伝えられています。
このように、嵐というグループの活動が一区切りとなったことで、メンバーそれぞれが新たなフィールドで自立し、表現の幅を広げているのです。
ファンへの“けじめ”としての最後のツアー
2026年に予定されているラストツアーは、「嵐」というグループがファンへ贈る最後のラブレターのようなものです。
活動再開ではなく“完結編”であることを明確にしながら、あえて華々しい復活ではなく、感謝とけじめを込めたステージに徹する姿勢は、嵐らしさの象徴とも言えます。
現在ツアーの詳細は未発表ながらも、関係者筋では5大ドームツアーに加え、可能であれば海外、特にアジアでの凱旋公演を視野に入れているとも報じられています。また、全国各地の映画館でのライブビューイングや、特別なドキュメンタリー映像の制作も検討されているとの情報もあり、ファンとの最後の時間をできる限り多くの人と共有する工夫がなされています。
終わりに:「嵐の美学」が貫いた終幕
「5人でなければ嵐ではない」。この言葉は、25年以上にわたってグループを支えてきた核心であり、彼らの哲学そのものです。
再始動ではなく、5人が揃った“今”をもって、理想のかたちで終える。その潔さ、決断力、そしてファンとの信頼関係を守り抜いた姿勢は、まさに嵐の「美学」を体現しています。
嵐は、2026年春にその歴史を静かに、しかし堂々と締めくくることでしょう。その姿は、過去・現在・未来すべてのファンにとって、かけがえのない記憶として残り続けるはずです。
この先、5人が再び同じステージに立つことはないかもしれません。しかし、「嵐」は終わっても、嵐が紡いできた“時間”と“絆”は、永遠に生き続けるのです。